作った入れ歯が合わない
作った入れ歯が合わない
総入れ歯の方は、歯がないため、歯茎で入れ歯を支えることになります。そのため、歯茎との調和のとれていない入れ歯を使用すると痛みが生じる可能性があります。
また、噛む力は自分の体重くらいまで出ると言われています。噛み合わせが悪いと、その大きな力が一点に集中し、その結果、痛みを引き起こすことがあります。
痛みのない入れ歯を実現するには、顎全体で力が均等に分散するようにすることが重要です。
入れ歯のふちの形状が、筋肉の動きと調和していないことが原因と考えられます。
写真は下顎の入れ歯と関係する筋肉を示したものです。
頬側は、オトガイ筋や下唇下制筋、頬筋、咬筋が関わります。舌側は、オトガイ舌筋やオトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、上咽頭収縮筋等が関わります。
オトガイ筋の運動を邪魔しているため、筋肉が動くたびに下顎頬側前方部に痛みを生じます。つまり、頬側前方部の長さが長すぎたり、厚すぎたりしている可能性があります。
入れ歯の型を取る際には、筋肉の動きを考慮する必要があります。どのようなお口の動きをすると、どの筋肉が関わってくるかを知ったうえで、入れ歯を製作することが大切です。硬い組織である歯と異なり、動きのある組織の型取りには熟練の技術が必要です。専門医が筋肉の動きを考慮した入れ歯を製作することで、痛みの原因を解消することができます。
歯茎は柔らかい組織ですが、入れ歯を使用すると、入れ歯と歯茎の下にある骨に挟まれる形になります。
人それぞれ、部位により歯茎の厚みが違いますが、それらを考慮せずに入れ歯を製作すると、歯茎の薄い部分に大きな力がかかり、痛みを引き起こすことがあります。
入れ歯製作時に型を取り技工所に送ると、歯茎の厚さや軟らかさがわからなくなる(石膏の型になっている)ため、歯茎の厚みを考慮することが難しくなります。医師が直接診察と製作を行うことで、歯茎の厚みを考慮した入れ歯の製作が可能です。また、痛みを軽減するため、入れ歯が口に接する部分を軟らかい材料で作る方法もありますが、あまりお勧めはしていません。なぜならば、軟らかい素材はクッション性を高め、痛みを軽減する効果はありますが、同時に力を分散してしまい、噛んだ時に力がかかりにくくなり、噛みにくい入れ歯になる可能性があるからです。しっかりとフィットし、且つ、しっかりと噛めることが重要となります。
右で噛むと左が浮いたり、左で噛むと右が浮いたりする状態は避ける必要があります。そうなると、食べ物が入れ歯の下に入り込んで痛みを引き起こす可能性があります。さらに、噛むたびに入れ歯が動くと、歯茎に擦り傷をつける原因となります。これが繰り返されると、痛みの原因となってしまいます。
入れ歯がガタガタ動いてしまう原因は噛み合わせにあります。ガタつかない噛み合わせを作るためには、人工歯をバランスよく並べられる知識や技術はもちろん必要ですが、最適な装置を用いることも大切になります。
一般的な入れ歯(保険適応ではほぼ全て)を製作する際には、顎の動きは平均値を利用します。しかし、平均値は体格や年齢を考慮していないため、平均値から離れた人ほど入れ歯がガタつきやすくなります。当医院では、平均値ではなく、それぞれの顎の動きを把握できる装置(半調節性咬合器)を使用して入れ歯を製作します。そのため、本来の顎の動きに合わせた入れ歯製作が可能になります。
では、なぜ顎の動きを考慮しないで製作する入れ歯が多いのかというと、顎関節の動きは直接見ることができないため把握が難しく、さらに手間もコストもかかるため、一般的な歯科医院ではやりたがりません。しかし、当院では最高の入れ歯製作には、お一人お一人の顎の動きをきちんと把握することは必須であると考えています。そのため、手間は惜しみません。妥協もしません。患者様を1日お一人に限定させていただいているのも、お一人お一人に全力で取り組みたいからです。
口を開けると入れ歯が外れる、鼻をかむ時に入れ歯が外れる、話をしていると入れ歯が外れる、というように食事時以外の際に入れ歯が外れる原因は、入れ歯と筋肉・歯茎が調和していないことにあります。例えば、口を開けると下の入れ歯が外れる場合は、開口時に働く筋肉と入れ歯の形態が調和していないことが原因です。筋肉の動きを考慮し、且つ歯茎とフィットした入れ歯を製作することで、入れ歯が外れる心配はなくなります。
食事時に外れる原因は、上述した入れ歯と筋肉・歯茎との調和の問題以外に、噛み合わせが関わってきます。
食事の際は顎を上下に動かすだけでなく、左右にも動かして食物をすり潰します。そのため、左右の噛み合わせのバランスが悪いと、入れ歯に外す力がかかってしまいます。入れ歯が外れてしまうと食事のしにくさにもつながってしまうのです。
下記の「食事がしづらい」の部分や「レベルの高い入れ歯が欲しい(おいしく食事をしたい)」のページも関係してきますので、ぜひご一読ください。
身体は食べ物でできています。そのため、何を食べるかで健康にも不健康にもなり得るのです。
食事をしていても、きざみ食や水分の多い食事ばかりだと食べているつもりでも栄養が足りていないことがあります。そうなると、心身機能が低下し、さらには病気や要介護状態へと進んでいってしまうのです。そのため、きちんと噛めることは、健康寿命を延ばすことにつながるといえます。(オーラルフレイルの考え方)
また、年齢を重ねると嚥下機能(飲み込む力)が弱くなってきます。そのため、今まで食べられていたものが、食べにくくなってくることがあります。つまり、年齢を重ねるほどに、より一層しっかり咀嚼する(噛み砕く)能力が求められるのです。
入れ歯になったんだから、食べにくくて当たり前と思っている方が多いと思います。そんなことはありません。入れ歯に適した噛み合わせときちんとした入れ歯形態を付与することで、食べにくさが解消される可能性があります。
自分の食べたい物を食べ、楽しく食事すること、これはQOL(生活の質)の向上にはとても大切なことです。ただし、食事のしづらさは、入れ歯だけではなく、姿勢や生活習慣など多くの要素が関わります。そのため、総合的に判断して治療をしていくことが大切です。
食事中に入れ歯がぐらついたり、外れそうになると、食事がしづらくなります。その原因は、食事の際に動く部分を考慮して入れ歯が製作されていないからです。
食事の際は、筋肉や歯茎が動きます。その動きを考慮して型取りを行うことで、入れ歯とお口がきちんと調和し、安定する入れ歯になります。しっかりフィットした入れ歯には、入れ歯安定剤は必要はありません。
もう一つ考えられる原因は、噛み合わせです。左右の噛み合わせのバランスが悪いと、食事の際に入れ歯がガタついてしまいます。食事の際は、食物を細かくすり潰すために顎を左右に動かします。そのため、バランスの悪い噛み合わせだと、入れ歯が動く原因になるのです。
雑食である人類は、食事をする際に噛み切るだけでなく奥歯ですり潰す動作も行います。
入れ歯というと漫画やアニメでパクパク上下に動いている様子が描かれていますが、実際には上下左右3次元の動きを行っています。口の形に合わせるだけでなく、人それぞれ異なる顎の動きを考慮した入れ歯を使用することで、しっかりとすり潰すことができ、胃腸への負担を減らし栄養の吸収を高めます。
自分が思っているよりも早く上下の歯が当たる、逆に思っているよりも咬み込まないと歯が当たらない場合は、入れ歯の咬み合わせがあっておらず、どちらの場合も顎の筋肉が一番力を出せる場所で噛めていません。自分にぴったりの咬み合わせの高さにすることで効率よく咀嚼することができます。
食べ物が頬側に落ちる原因は、噛み合わせにあります。図を見てください。入れ歯によく用いられる2通りの奥歯の噛み合わせを描いたものです。一つはフルバランスドオクルージョンと言われる噛み合わせ、もう一つはリンガライズドオクルージョンと言われる噛み合わせです。食事の際は、赤色で示すように歯と歯の間には食べ物が介在します。
フルバランスドオクルージョンでは、頬側咬頭と舌側咬頭がしっかり噛みあいます。その閉鎖された空隙(=圧搾空隙)に食べ物がたまり、しっかり押しつぶされ、食べ物は頬舌側にはもれません。(食べ物は頬舌側にはもれず、隣接面方向に流れ、そこから舌側に溢出します。)
それに対し、リンガライズドオクルージョンでは、上下の頬側咬頭どうしの接触がないため、圧搾空隙ができず、食べ物が頬舌側に分かれます。そのため、頬側に落ちた食べ物は口腔前庭に貯留してしまうのです。
つまり、食べ物が頬側に落ちないようにするために入れ歯に必要な噛み合わせは、フルバランスドオクルージョンということがわかると思います。
発音には舌の動きが大きく影響するため、入れ歯を製作する際には舌の動きや発音の様子を事前に確認することが必要となります。舌との調整が行われていない場合、下記のような理由で喋りにくくなることが考えられます。他にも理由は様々ありますので、原因を見極めることができる医師に相談することが大切です。
上の総入れ歯は上あごを覆う形状のため、上あごの形や厚みが発音に大きく関わります。
「サ」の発音を例にお話しします。図は上あごのイラストです。斜線部分が「サ」の発音時に舌が触れる部分になります。つまり、奥歯~側切歯(前から2番目の前歯)あたりまで舌が触れ、中央部分は舌が触れないことで「サ」の発音ができるのです。もし、上の入れ歯が厚すぎると、中央部分も舌が触れてしまうことになり、「サ」の発音がしにくくなります。
このように、舌が入れ歯に触れることで発せられる音と、逆に触れないことで発せられる音が、音の種類により決まっています。すべての音が発せられるように、上の入れ歯形態を工夫することが大切です。
また、咬み合わせの高さ(咬んだ時の上下の距離)も発音のしやすさ(=舌の接触しやすさ)に関わります。
咬み合わせの高さを決定する際、総入れ歯の方は、高さの参考となる歯がありません。そのため、計測の仕方によっては、高すぎたり低すぎたりする場合があります。特に高すぎる場合には、舌が上あごに触れることができず発音しにくくなります。このようなことを防ぐために、複数の計測方法で確認することが必要です。
歯並びが内側すぎる場合、お口の中が狭くなり、舌が動かしにくくなります。その他にも、下の入れ歯の形態が悪い場合は、発音しようと舌を上に持ち上げようとしても上手く持ち上げることが出来ず、発音に支障が出る場合があります。このように舌の動きが阻害された場合に、喋りづらさの原因となるのです。
入れ歯が外れやすい人の中には、入れ歯が外れないように無意識に舌で入れ歯を抑えようとする癖がついている方がいらっしゃいます。その場合も、音を発するための動きではない、不自然な舌の動きとなるため、喋りにくくなってしまいます。